「ジョブコーチ」支援を得るために
NPO法人 くらしえん・しごとえん
鈴木 修
1.「ジョブコーチ」とは
障害者の就労支援援助者の総称。
公的な資格はなく、様々な形での「ジョブコーチ支援」があり、呼び方も「ジョブサポーター」「ジョブライフサポーター」「就労支援サポーター」「ジョブコーチ」等がある。
*「ジョブコーチ」という言葉だけが「一人歩き」しているという危惧もある。
国の制度のもとで活動
- 「職場適応援助者助成金」による支援
原則1ヶ月から7ヶ月(標準3ヶ月)、フォローアップ1年
- 取りまとめ:静岡障害者職業センター
〒420-0851 静岡市黒金町59-6 大同生命静岡ビル7F
電話:054-652-3322
県の事業のもとで活動
- 「しずおか障害者就労支援ネットワーク」による「ジョブコーチ」支援
原則1ヶ月15回程度、単年度事業、養護学校実習支援(3年生就労対象)
- 取りまとめ:浜松NPOネットワークセンター
〒432-8021 浜松市中区佐鳴台3-52-23
電話/ファックス:053-445-3717
他の都府県における制度
- 「ジョブサポーター」の養成・派遣(広島県、三重県、京都府、和歌山県等)
- 「ジョブライフサポーター」の養成・派遣(大阪府)
- 「障害者就労支援者」の養成・派遣(愛知県)
- 「障害者雇用定着促進事業」により「ジョブコーチ」を常駐(金沢市)
各企業・事業所で雇用され活動する「ジョブコーチ」
施設、NPO法人、就業・生活支援センター等で就労支援をするジョブコーチ
参考 都道府県等における障害者雇用促進に係る支援施策の概要(平成18年度)
(平成18年12月厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課)
2.ジョブコーチの仕事
- 支援の対象は、障害者本人、事業主、家族三者の中間にたつ
- 最終的な目標は、ナチュラルサポートの形成
- 「支援に入ったときから消えかた(フェイドアウト)を考える」
- 職場定着のためのフォローアップ
- 仕事の性格
- 緊急性、瞬間性、計画性、柔軟性、専門性、
・障害者就労における「ER(救命救急)」
・就労という「極めて短い時間をつなぎ合わせる」
ジョブコーチによる支援事業実施マニュアル(第1号職場適応援助者)
1)障害者支援
- 人間関係、職場内コミュニケーションに関する事項
- 挨拶・返事、報告・質問、会話への参加等のコミュニケーション能力向上に係る支援
- 他者との協調、職場内のマナー等対人処理能力の改善に係る支援
- 基本的労働習慣に関する支援
- 継続勤務、安定出勤、電話連絡等に係る支援
- 規則の遵守に係る支援
- 身だしなみ、健康管理、生活のリズムに係る支援
- 業務遂行に関する事項
- 業務内容等の理解に係る支援
- 作業遂行力の向上に係る支援
- 作業態度の改善に係る支援
- 通勤に関する事項
- 通勤時のトラブルへの対応力、交通機関の利用能力の向上に係る支援
- 社会生活技能、余暇活動に関する事項
- 社会資源の活用方法の理解促進に係る助言
- 余暇活動への参加、休日の過ごし方等への対応に係る助言
2)事業主支援
- 障害に係る知識に関する事項
- 障害特性の理解と障害に配慮した対応方法に係る助言、援助
- 障害に関する医療機関等との連携方法等に係る助言、援助
- 職務内容の設定に関する事項
- 作業分析、課題分析に係る助言、援助
- 作業内容、作業工程、作業補助具、作業標準等の設定、作業能力の把握方法等に係る助言、援助
- 業務遂行に係る指導方法に関する事項
- 効果的な指導方法、指示や見本の定時方法等に係る助言、援助
- 歩留まり率の向上、作業ミスの改善等に係る助言、援助
- 職場の従業員の障害者との関わり方に関する事項
- 指示、命令、注意の仕方、しかり方、ほめ方、同僚との役割分担の方法、グループワークでの留意事項等に係る助言、援助
- 障害の知識に係る社内啓発等の方策に係る助言、援助
- 休憩時間の交流、社員旅行、余暇活動での事業所側の対応方法等に係る助言、援助
- 家族との連絡、連携体制の確立関する事項
- 事業所と家族の関係調整等に係る助言、援助
- 家族との連携方法についての助言、援助
3)家族支援
- 障害に係る知識に関する事項
- 障害特性と家族の対応のあり方、関係機関の利用方法に係る助言、援助
- 事業主への協力依頼内容等に係る助言、援助
- 職業生活を支えるために必要な知識、家族での支援
- 安定した職業生活を送るための家族の関わり方に係る助言
- 余暇、休日の過ごし方、生活リズムの確立・維持のための家族の役割に係る助言
- 事業主との連絡、連携体制の確立に関する事項
- 事業主と家族との関係調整等に係る助言、援助
- 事業主との連絡、連携方法に係る助言、援助
3.就労するために必要なこと(スキル以前のものとして)
- 本人:働きたい、という思い
- 家族:親の思いと本人の思いのすりあわせ
- 施設:「利用者」から「被雇用者」へという職員の意識の転換
- 事業所:「何のため」に雇用するのか、それなりの「覚悟」
4.ジョブコーチ制度について
- ジョブコーチに対する報酬の現状
- 職能として確立されていないため、十分な報酬額が得られていない
- ボランティアとして認識されているような現状がある
- 公的制度を超えたものが求められる
- 公的制度では無料で利用できるが、果たしてそれで良いか
- 公的な補助がなくなったら支援はおしまいという現実
- 「当たり前に」働くためにどう利用するのか
- 「してもらう」のではなく、「自らが主体」の意識で利用する
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